Googleが作った新しい生成AI『NotebookLM』は企業の決算分析に使えるかの検証②

生成AI

前回までのおさらい

前回はNotebookLMにアステラス製薬の単年の決算短信をアップロードして配当性向や今後の配当維持についてAIに分析させました。十分活用できるレベルでしたが単年データだけでは投資判断は難しいため次に複数年度の決算短信をアップロードして分析させることにしました。

複数年度の決算短信をNotebookNLで分析

前回はアステラス製薬のデータを活用しましたが、今回は丸井グループのデータでAI分析をしてみます。ちなみに丸井グループは2024年5月末から新規に日経累進高配当株指数の銘柄に選定された企業です。10年連続増配、14年非減配の優良企業です。

決算短信をダウンロードする

期末の決算短信をNotebookLMにアップロードするためにまず丸井グループのHPから決算短信資料を2012年~2023年まで全てダウンロードしてきます。

丸井グループの投資家情報にIRライブラリーがありますのでそこから決算短信をダウンロードできる分だけ全てダウンロードしてみます。HP上からダウンロードできるのは2012~2023年の決算短信です。

NotebookLMへ決算短信をアップロード

NotebookLMのサイトの左上の⊞ボタンを押してアップロードするデータ種類を選択します。今回の決算短信はすべてPDFなのでPDFを選択します。

PDFは一括でアップロードが可能です。アップロードしたデータは左サイドバーに表示されます。チェックを外すことで参照データから除外することもできます。

ノートブックガイドからよくある質問を作成

右下の*ノートブックガイドからよくある質問をAIに作ってもらいます。ノートブックガイドを押し左上にある生成の『よくある質問』をクリックします。

クリックするとAIによる『よくある質問』の自動生成が開始されます。

新しいメモとして生成されているのでクリックするとAIが決算短信の内容を確認したうえで予想される質問事項をいくつか作成し、その回答も同時に作成してくれます。生成された質問内容は下の8個。

株式会社丸井グループの決算短信(2012年3月期~2023年3月期)に基づき、よくある質問とその回答を以下の通りまとめました。

よくある質問

  1. 丸井グループの事業概況は?
  2. 丸井グループのビジネスモデルは?
  3. 丸井グループの財務状況は?
  4. 丸井グループの株主還元策は?
  5. 丸井グループの中長期的な経営戦略は?
  6. 「インクルージョン」という言葉を多用していますが、具体的にどのような取り組みを行っていますか?
  7. 気候変動が丸井グループの事業に与える影響は?
  8. 丸井グループのリスク管理体制は?

一例として1.丸井グループの事業概況は?の質問のAI回答はこちら。

1. 丸井グループの事業概況は?

丸井グループは、小売事業とフィンテック事業を中核に、未来投資を加えた三位一体のビジネスモデルで事業を展開しています。

  • 小売事業: 全国にマルイ、モディなどの店舗を展開し、アパレル、雑貨、食品など幅広い商品を取り扱っています。近年は、リアル店舗とECを融合させたオムニチャネル戦略を推進し、顧客体験の向上に努めています。
  • フィンテック事業: クレジットカード「エポスカード」の発行や、決済サービス、レンディングサービスなどを提供しています。近年は、若年層や既存金融機関のサービスが行き届きにくい層へのサービス提供を強化しています。
  • 未来投資: 共創投資と新規事業投資を通じて、新たな価値創造に挑戦しています。特に、アニメ、K-POP、サステナビリティなどの分野に注力しています。

端的でかつ非常に分かりやすい文章で回答が生成されています。丸井グループについて知らない人でもとういった企業か分かる内容となっています。よくある質問では丸井グループがどういった会社であるのかが分かる内容となっています。

学習ガイドから生成

よくある質問から質問と回答の自動生成をしましたが、次に学習ガイドをAI生成してみます。再び右下のノートブックガイドをクリックし、次は学習ガイドをクリックしてみます。

しばらくすると新しいメモとして丸井グループ財務諸表分析学習ガイドが生成されました。メモの内容ではいつかの財務諸表に関する設問とその回答が生成されています。10個の設問が自動生成されました。記事として見やすいように少し編集してQ&A方式で記載していきます。

Q1.売上高(収益)の推移:過去11年間の売上高(収益)の推移を分析し、その要因を考察してください。

A1:売上高は2012年3月期をピークに減少傾向が続いていましたが、2019年3月期から回復傾向に転じています。これは、少子高齢化や消費低迷などの影響を受けながらも、EC事業の強化や新規事業の創出など、時代の変化に対応した経営戦略が功を奏したと考えられます。

Q2.営業利益率の推移:過去11年間の営業利益率の推移を分析し、その要因を考察してください。

A2:営業利益率は2012年3月期以降、おおむね10%前後で推移しています。これは、収益構造の転換を図りつつも、コスト管理を徹底してきた結果と考えられます。しかし、競争激化や原材料価格の高騰などが懸念材料として挙げられます。

Q3.自己資本比率の推移:過去11年間の自己資本比率の推移を分析し、財務リスクの観点から考察してください。

A3:自己資本比率は2012年3月期以降、40%台後半から30%台前半で推移しており、安定的な財務状況を維持しています。しかし、近年は減少傾向にあり、財務リスクの観点から、自己資本比率の低下に歯止めをかける必要があると言えるでしょう。

Q4.キャッシュフローの状況:過去11年間のキャッシュフロー計算書を分析し、特徴と改善点について考察してください。

A4:キャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフローが近年マイナス傾向である一方、財務活動によるキャッシュフローがプラスで推移しており、資金調達によって事業活動を支えている状況がうかがえます。投資活動によるキャッシュフローは、固定資産の売却や投資有価証券の売却による収入などでプラスとなる年もありましたが、近年はマイナス傾向です。

Q5.配当政策:過去11年間の配当政策を分析し、企業の安定性や成長性との関連性を考察してください。

A5:丸井グループは安定的な配当を継続しており、株主還元を重視する姿勢がうかがえます。しかし、近年は利益水準が低下していることから、配当性向の上昇や配当金の減額の可能性も考慮する必要があるでしょう。

Q6.投資活動:過去11年間の投資活動の内容を分析し、今後の事業展開について考察してください。

A6:投資活動は、店舗の改装や新規出店、EC事業の強化など、収益基盤の強化と新規事業の創出を目的としたものが中心となっています。近年は、未来投資として、共創投資や新規事業投資も積極的に行っています。

Q7.財務活動:過去11年間の財務活動の内容を分析し、財務戦略について考察してください。

Q7:財務活動は、社債の発行や長期借入金の調達など、事業拡大のための資金調達を積極的に行っています。また、自己株式の取得による資本効率の向上も図っています。

Q8.重要な会計上の見積り:丸井グループの連結財務諸表における重要な会計上の見積りを特定し、その影響について考察してください。

A8:重要な会計上の見積りとしては、貸倒引当金や減損損失引当金などが挙げられます。これらの見積りの変更は、丸井グループの連結財務諸表に大きな影響を与える可能性があります。

Q9.セグメント情報:丸井グループのセグメント情報を分析し、各セグメントの収益性や成長性について考察してください。

A9:セグメント情報は、小売事業とフィンテック事業の2つに大別されます。小売事業は売上高が大きく、安定的な収益基盤となっています。フィンテック事業は、近年売上高を伸ばしており、今後の成長が期待されます。

Q10.連結財務諸表の特記事項:過去11年間の連結財務諸表の特記事項を分析し、丸井グループの経営上の課題やリスクについて考察してください

A10:連結財務諸表の特記事項としては、会計基準の変更や訴訟に関する情報などが挙げられます。これらの情報は、丸井グループの財務状況や経営成績に影響を与える可能性があるため、注意深く確認する必要があります。

『よくある質問』よりもこちらの『学習ガイド』の方がより財務状況を示す内容となっており投資に活用できそうです。過去11年分の決算短信を自分で読み解くのはかなりの労力を必要としますがNotebookLMなら労せず分析ができそうです。

Q5では配当政策について過去11年のデータをもとに回答してくれているので私のような高配当投資をしている投資家にはありがたい情報となっています。

まとめ

NotebookLMを使用した決算分析11年分を『よくある質問』と『学習ガイド』を利用して分析してみました。決算内容の要約だけでなく事業内容やセグメントについても自動でまとめてくれました。

これだけでも十分投資に活用できますが、年次のEPS推移や配当金の推移、増配回数と非減配回数をまとめられたら更に活用の幅が広がりそうです。次回第3弾としてそれをテストしたいと思います。

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